2018年10月24日水曜日

山口昌男 『古本的思考-講演敗者学』

川村伸秀さんの編集による、山口昌男の貴重なテクスト群(全篇単行本未収録!)が、このほど一書として刊行されました。装幀極美麗。

山口昌男 『古本的思考-講演敗者学』晶文社、
                    2018年9月30日発行。

後期山口人類学は、自ら“敗者学”と名づけた、近代日本において挫折した人々や戊辰戦争に敗れた幕臣たちのネットワークの探求に向けられた。それは『「挫折」の昭和史』『「敗者」の精神史』『内田魯庵山脈-〈失われた日本人〉発掘』等へと結実したが、著者は同時期に、敗者学に繋がる講演を各所で行っている。本書に収録したのは、これまでの著者の単行本には未収録のものばかり。なかにはどこにも発表されずに著者の自宅で眠っていたものもあり、初めて眼にする読者も多いはずだ。同じく、単行本初収録となる敗者学関連のインタヴュー、論考、紀行文等も併せて掲載する。            (本書表紙カバー袖、リード文より)

川村さんが巻末「編集後記」にて明記されている初出データをみると、どれも入手がかなり手間取りそうな講演等の原稿であるうえ、没後のご自宅から発見された、ワープロ打ちの原稿や、限定私家版のうちの著者用番外書などが3点も! 一介の山口読みにとっては、禁断の魔界への扉が、またひとつ開かれたような、クラクラした感覚に。
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-   先生は日本だけじゃなくて世界中の古本屋さんに現れてますよね。
山口 危険な素人だからね(笑)。
-   最近の収獲はどうですか。
山口 このあいだプラハに行ったらね、思っていた通りいい古本屋が復興していた。そこで、一九二〇年代の批評家、芸術家でモダニストのカレル・タイゲのものはないかって訊ねたら、ちゃんと三冊出てくるんだよね。ついこの前まで、タイゲの本を売ってたら捕まるような状況だったからたいていは隠してたんだけど、最近ようやく古本屋さんに出るようになった。
-   それを買われた?
山口 これはすごくいい本でね。高かったんだけど買ってしまって、でもチェコ語を読めないから(笑)、これからやらなきゃいけない(笑)。泳げないのに流れに飛び込む(笑)。 
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山口 何年か前、NHKの取材で、ベルギーに行ったんだけど、ディレクターがまずブリュッセルの古本屋で私が本を探してるところから始めたいって言うの。で、それっぽい一軒の店に入って奥でシャンソールないかって訊ねた。向こうも知ってるみたいでね、それなら下の階にあるみたいなことを言う。で、降りていってすぐ見つけた。そうしたらインタヴュアーが「どうして、すぐ見つけることができたのか」って聞くんだよね。
 僕には女漁りの素養はないけどね(笑)、まあ女漁り、男漁り、浅利慶太、なんでもいいんだけど(笑)、もしそうであればね、向こうから歩いてくるだけで相手がなんとなく自分を呼ぶってことがきっとあるでしょ。記号による情報を発信してるってことだよね。本もタイトルと中の活字だけではない。古さとか装幀の仕方とか、ただそこにあるだけの本が発信する記号情報を瞬間的に読み取ることができなければ、出会えないんだよね[…]
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-   古書店で見つけた『赤露脱出記』でしたっけ。その著者の勝野金政を巡ってというところに話を戻したいんですか。
山口 つまり、最初に話しておくとね、たまたま古書店で見つけた一冊の古本から、時間の旅をしたということなのね。
-   長旅ですか。
山口 だいたい僕はね、ギャラが安いほど話が長くなりますから(笑)。ましてや古本組合の雑誌でしょ。ギャラいらないから二年ぐらい連載で話したい(笑)。
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山口 […] 最初にも言ったけど、古本というのはまさに仮設的なものでしょ。その仮設性のなかから何を読むのか。ここでは自分の気づかない自分を読み、先へ進むための手がかりを掴めるかどうかというのが問題になる。そうなると、新刊本というのは固まりきっているパラダイムからしか出てこないから、パラダイム・チェンジの可能性は古本の持つ仮設性の側に遙かにあるんだって言える […] 古本的というのはね、古本を通じて人脈を全部取り戻す、そういう過程を通じて枠組(パラダイム)を作りながらまた古本を探し、探した古本のなかからまた新しい枠組みが出てくる、そういう関係そのものだよね。

                   (以上すべて、本書所収インタヴュー 「雑本から始まる長い旅」より。 一読驚嘆) 

2018年10月23日火曜日

盛況 TUFS Cinema アフリカ映画特集2018


当日配布資料より (@illcommonz 2018)

TUFS Cinema
アフリカ映画特集2018。

満を持しての
「わたしは、幸福(フェリシテ」
上映会を、このほど無事、盛況の
うちに終えることができました。
約300名のご来場者のみなさまには、プロメテウス・ホールの巨大スピーカーで、コンゴ現代音楽を存分に堪能していただけたのではないかとおもいます。

上映後のフリートークについては、
下記紹介記事をご覧ください。
http://www.tufs.ac.jp/NEWS/trend/181022_1.html


2018年10月22日月曜日

アフリカ - 表現と社会



すでにお伝えした
「ジョゼ・デ・ギマランイス」展の
オープニング記念シンポジウムで、
右のようなタイトルのお話をさせていただきました。



当日は、小湊鉄道に揺られながら
すこし早めに市原湖畔美術館まで
うかがって、ギマランイス氏とともに、館内展示作品を鑑賞しました。個々の作品の背景などをご本人がフランス語で丁寧に解説してくださり、じつに贅沢な、審美のひとときをすごさせていただきました。



自己の作品世界とアフリカ美術、あるいは旅と現代世界の連関をときあかすような見事な展示構成で、来月下旬には連日開催のイベントも予定されているとのことです。関心のある方は、この秋ぜひ、周囲の風景も静穏で美しい
市原湖畔美術館まで足をお運びください。おすすめです

2018年10月4日木曜日

当日資料のチラ出し

この一冊を超えるものはいまだにない、幻の名著 (個人蔵)
9月15日付の本ブログでも
前のめり状態で予告したとおり、
来週末12日に、アラン・ゴミスの

『私は、幸福(フェリシテ)』

が本学プロメテウス・ホールで
上映されます。

観覧席は、ふこふこのシートで、
爆音上映で、
しかも予約不要、無料ですぞっ!

これにあわせ、このほどTwitterの
「東京外国語大学TUFS Cinema」では、上映会当日のトークイベントで使われる資料(作成: 小田マサノリ)の一部を、前のめり状態でチラ出しする暴挙に打って出ました!
https://twitter.com/tufscinema
嗚呼キンシャサ。 幻のカセットテープ (個人蔵)

会場で当日配布される資料一式は、
たいへんに手間をかけた、
ゴージャスな内容になっています。
なんといっても、フルカラーで非売品!

ああ、ぼくらの街 キンシャサよ…
この30年の想いを。
Jalousie automatique......


多くの方のご来場をお待ちしています。









2018年10月3日水曜日

ギマランイス展

今月後半から、千葉の
市原湖畔美術館にて、
「ジョゼ・デ・ギマランイス展」が開催されます。
そのオープニング記念シンポジウムに、ゲストとしてお招きをいただきました。私にとっては、きわめて重要な機会になります。

■ジョゼ・デ・
     ギマランイス展
 ~アフリカは魅了する~

2018. 10. 20(土)~
     2019. 1. 14(月)
  於: 市原湖畔美術館
後援: ポルトガル大使館
   日本・ポルトガル協会

■ オープニング
     記念シンポジウム
 「アーティストを魅了する
          アフリカ」
10. 20(土) 14:00 - 17:00
市原湖畔美術館
講演:
  ジョゼ・デ・ギマランイス
ゲスト: 真島一郎
モデレーター: 北川フラム
日葡逐次通訳
定員:70名
(事前予約制、申込はウェブサイトを参照ください)
参加費:1,000円




【作家略歴】
1939年ポルトガル、ギマランイス生まれ。ポルトガルを代表する現代美術作家であり、絵画、彫刻、パブリックアートなどを中心に制作し、国際的に活躍しています。リスボン万博、ポルトガル領マカオの中国への返還等の国民的イベントでモニュメントやロゴマークのデザインを手掛けたことでも知られています。また、非西洋文明圏における文化の交差に強い関心を示し、自身の作品テーマに取り入れるほか、アフリカ、ラテンアメリカ、中国などのプリミティブアートの熱心なコレクターでもあるのです。日本国内でも、ファーレ立川、代官山アドレス、釧路シビックコア、宮城県図書館、越後妻有・大地の芸術祭、瀬戸内国際芸術祭など、各地で彼のパブリックアートが親しまれています。

2018年10月2日火曜日

2018 秋学期

秋学期が今週からはじまりました。
今期は、つぎの講義・演習を担当します。


月4 院修士演習
     Annual Review of Anthropology 過去5年の注目論文読解

月5 院博士演習 バタイユ読解Ⅲ
     『至高性 (普遍経済論の試み 第3巻)』第Ⅱ部より

火3 学部講義 (選択科目)
     現代世界における表現/表象の問題系
              参考書: 鹿子裕文 『へろへろ』 ナナロク社

火4 学部3年ゼミ  ゼミ論 Writing Up Seminar


火5 学部4年ゼミ  卒論 Writing Up Seminar


火6  基礎演習


年末には、小田マサノリ先生との「合同ゼミ」企画を、目下立案中。
参加希望者は、連絡ください