2022年12月18日日曜日

〈夜〉の鼎談 ー 共の転位と翻訳


 新年2023年1月17日(火)に、西谷修さん(哲学者、東京外国語大学名誉教授)を本学にお迎えし、西谷さんが最近執筆された、読み手に強い印象を与えるテクストをめぐって、ファム・コン・ティエン思想研究の第一人者である同僚の野平宗弘さんと真島とで、〈分有〉の未来をめぐる鼎談を交わすことになりました。哲学の〈夜〉に関心のあるかたのご来場をお待ちしています。

2022年11月4日金曜日

読売中高生新聞

 

読売中高生新聞で取材をしていただいた記事がこのほど掲載されました。若き読者にすこしでも自分の気持が届くことを願っています。

「講義の鉄人:異文化への違和感 学びに ー 文化人類学 真島一郎」『読売中高生新聞』2022年10月28号、第20面。

2022年11月2日水曜日

挨拶文

日本文化人類学会の和文学会誌『文化人類学』に  このほど短い挨拶文を寄稿しました。

真島一郎「会長就任のごあいさつ」『文化人類学』 第87巻第2号、2022年9月30日発行、pp.341-342。

 

2022年9月15日木曜日

殷銅

川端康成没後五〇年。老境に到った審美の欲動に今また触れようと、川端そのひととは別種の参照点、いちど速読みしていた藤枝を再読。


[…]私は四人目の入場者として国立博物館「中華人民共和国古代青銅器展」の門をくぐった[…]私の手帖には翌日の予定も書いてある。近代美術館でタマヨ個展を見たのち帝劇九階の出光美術館別館に展示されている神戸白鶴美術館所蔵の中国古代青銅器をひとまわりし、湯島天神下の骨董屋未央堂に寄って預けものの軸を受けとる次手に品物を冷やかして陽のあるうちにゆっくり帰宅するというのである[…]白鶴所蔵の中国銅器は数年まえに本田秋五の案内で本館を訪ねたときその美しさ立派さと数量に驚嘆した記憶があった。今度の出開帳でその大部分に再会し、博物館のそれと併せ見られるという期待で私の胸はうずいていたのであった。[…]まったくそれは期待にたがわぬ素晴らしい観物であった。[…]十年ばかりまえの秋、中国銅器に取憑かれはじめていた本田秋五の案内で京都住友家の泉屋博古館、藤井有隣館などの素晴らしい蒐集を見て頭が痛くなったことがあった。[…]「やっぱり殷銅にはかなわんなあ。春秋戦国となると何だか迫力が落ちてすこし物足りなくなるなあ」と云いあった。[…]しかし[…]これまでの経験をまじえた予感を頭の隅において春秋、戦国、秦、漢と、できるだけゆっくりゆっくり歩をすすめて行った私は、奇妙にもこれまで要らぬ技巧として心中に排斥していた文様の多様化と柔軟化とに意外な美しさを発見して驚ろいたのであった。[…]「いつもこのとおりだ-まだ」と私は思った。頭いっぱいに何かがつめこまれ、それ以上の努力はなんの効果も生まず、鈍磨した感覚は何かを受けつけるだけの反応力を失い、したがって自分にとってここにこんなふうにして未練がましく止まっていることは何の足しにもならないのであった。それは長い経験からハッキリしていた。「しかしおれはやっぱり駄目だろう」 私は嘆息するように思った。そして再びただ疲労を増すだけのために、人垣を縫うようにして最初の殷銅の部屋めがけて逆行して行った。いろいろのことがある。もう一度たしかめねばならぬものがある。見落しがあるかも知れない。二度と来られるかどうかはわからない。[…] 

藤枝静男「在らざるにあらず」

2022年9月3日土曜日

kishimojin

 

Juste au moment de quitter le deuil,

on se trouve encore en face de fleurs

si éphémères.










2022年4月10日日曜日

歳月をただ信じること

 

人類学者栗本英世さんの大阪大学ご退職を記念する文集が、このほど非売品として刊行されました。
栗本さんの思考と著作について、私も下記小文を寄せさせていただきました。
 
真島一郎「歳月をただ信じること」藤井真一・川口博子・村橋勲 編『サバンナの彼方-栗本英世教授退職記念文集』能登印刷出版部、pp. 163-169、2022年3月25日発行。

2022年4月4日月曜日

[セネガル・コンゴ]アフリカ音楽に寄せて

新刊のエッセイ集『地球の音楽』に小文を寄せました。
 
真島一郎「セネガル/コンゴ アフリカ音楽に寄せて」山口裕之・橋本雄一 編『地球の音楽』 東京外国語大学出版会、pp.157-162、2022年3月31日発行。

「地球上のさまざまな場所で、その土地に固有の音楽が鳴っている/音という形容できない不思議/東京外国語大学の世界各地・各ジャンルの50名の専門家・研究者らが奏でる珠玉の音楽エッセイ集!」(同書帯より)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
こんな動画に出てくる人びとに、ささやかなオマージュを献げました。
  

 

 

2022年4月1日金曜日

蒲生慶一先生を悼む

 

2022年4月1日、外大キャンパスにて

蒲生慶一先生が昨年3月に急逝されてから一年の時を経たことに、未だ茫然とした思いでおります。個人を偲ぶ追悼特集に、このほど小文を寄せさせていただきました。

真島一郎「蒲生慶一先生を悼む」『Quadrante』24: 21-22, 2022年3月31日発行。


2022年3月24日木曜日

卒業式 2021

 

爽やかな晴天となった昨日3月23日、府中キャンパスにて今年度の卒業式を無事迎えることができました。ゼミ卒業生のみなさん、心のこもったビデオメッセージ、お手紙、花束、たくさんの記念写真をありがとうございました。また、平日に年休を取ってまで留学組の同期生の門出を祝おうとキャンパスに駆けつけてくれた昨年度卒業生のべーる、さやちゃんにも感謝!

ご卒業ほんとうにおめでとうございます。

これからも永くゼミ友の繋がりを大切にしながら、社会のそれぞれの持ち場でご活躍されることを心から願っています。

2022年1月29日土曜日

卒論発表会2021

 
















 

 

 

 

 

 

ゼミ4年生による「卒論発表会2021」が、昨日開催されました。今年度はじつに下記21篇の労作が出そろいました。きわめて多彩な思考と感性の持ち主たちが、それぞれ自分に納得のいくレベルを目指して、最後までひたむきに努力を重ねてくれました。卒業生のひとりひとりに、心からの感謝と敬意を。

「嘉手納基地への眼差し-「復帰」を挟んだ比嘉康雄の映体-」

「平野啓一郎の「私」を巡る思考-「本当の自分/ウソの自分」から分人主義へ-」

「シリアを越えて踊る-あるバレエダンサーの異邦-」

「インドにおける日本式ものづくり学校の分析」

「歴史を逆撫でするイメージ-ディディ=ユベルマンによるファロッキ論-」

「労働とその対価-インドにおける家事労働者の現状とその権利保護をめぐって」

「社会的関係と健康-心理的安定が健康に与える影響-」

「地の利を活かした発展-東京都北区における土地利用史の事例から-」

「泣きつづける舞踊-ギリヤーク尼ヶ崎の生をめぐって-」

「カタリナの声-社会的な死をめぐる責任の所在」

「『LINES 線の文化史』の省察-デザイン制作の視点から-」

「近づくほど、遠ざかる、そして創造される「オリジナル」-フィリピンの山岳民族を舞踊化する過程で-」

「日本の近代化と民衆の生-ムラと思想の変容-」

「A New Segregation by Paradoxical Camps-Gated Communities as “Spaces of Exception” in Post-Apartheid Johannesburg-」

「ブラジルにおける「ホトトギス」系の移民俳句史概論」

「知る欲望がもたらす偏見-自己了解の可能性に向けて-」

「1938年イタリア人種法と解雇措置-「穏やかさ」の再検討」

「《貴婦人と一角獣》がはらむ両義性-中世ヨーロッパ聖俗の混在を想起する」

「命から逃げるな-命のアウトソーシングが加速する医療現場から見えてくるもの-」

「「ウサギ狩り」のその先に-ハイデガーの退屈論が呼び覚ます消費社会の空虚」

「死が私たちを分かつ、その場所から-『無為の共同体』精読」

2022年1月27日木曜日

ゼミ論発表会2021

 
















 

 

 

 

 

 ゼミ3年生による一年間の研究の総まとめ「ゼミ論発表会2021」が、昨日開催されました。今年度は、以下10篇の力作が生まれました。「自分は今、世界のどこに立っているのか」を根源的な問いとして共有しながらも、「ばらばらでひとつ」から生まれる個性豊かなチームワークが、今年もディスカッション1年分の積み重ねを経て、みごとに実を結びました。ゼミのみなさん、おつかれさま。そしてありがとう。

「隔離と再帰するアイデンティティ-ザンビア・ハンセン病回復者の生を通じて」

「マルクスの物質代謝論-素材的世界と経済形態規定の軋轢」

「ハラルの輪郭 -ハラル認証から浮かび上がるイスラム性」

「「スローライフ」は順番待ち-前橋市のスーパーシティ構想にみるスローの居所」

「法は日本を変えられるか-刑法の性犯罪規定改正と社会のジェンダー観」

「テジャの光彩と国権の権威-スカルノ演説「歴史の原動力となれ」を読む」

「「弱さ」の再解釈-藤原辰史「分解の哲学」に基づいて」

「どこにもいない被害者/どこにでもいる加害者-家庭内暴力における当事者性の欠如を再考する」

「メルッチの「新しい社会運動」論-動員と排除」

「外国人入居差別の実態と当事者の情動-インターネットから読み取る」

2022年1月1日土曜日

パンデミックサイト最終公演「鬼ノ夜祭」

新年のカウントダウンを、現代アートの公演参加で行いました。
 
■2021年12月31日(火)
街に除夜の鐘が鳴り響く大晦日の晩、パンデミックシアターで、パンデミックサイト最終公演・夜の部「鬼ノ夜祭」を開催しました。現代美術家の山川冬樹が、谺雄二の詩文「鬼の顔」「鬼の祭り」の二篇を、鬼気迫る渾身のパフォーマンスでリーディングしました。パンデミックシアターに設置された「隔離テント」のなかから小田マサノリが「森の精霊」に扮した真島一郎にむけて最後の演出を行いました。会場いっぱいにインスタレーションされた蔦の葉は「蔦のからまる廃墟に死神たちは寄りつかない」という民間信仰にもとづいた舞台演出です。(『パンデミックサイト ブログ』より)

(03m50s 前後から「森の精霊」登場)