2016年11月12日土曜日

『人種神話を解体する』


竹沢泰子さんを共編者とする全3巻のシリーズ論集『人種神話を解体する』が、この秋に東京大学出版会から相次いで刊行されています。

川島浩平・竹沢泰子 編
  『人種神話を解体する3  「血」の政治学を越えて』
  東京大学出版会、2016年9月30日発行。

斉藤綾子・竹沢泰子 編
  『人種神話を解体する1 可視性と不可視性のはざまで』
 東京大学出版会、2016年10月27日発行。


「メディアや文化における「血」の語りの構成を明らかにしつつ、自らの生き方と葛藤によって社会的実在としての人種概念を少しずつ動かし解体してきた、“境界に立つ当事者たち”の姿を仔細に追うことで、人種という表象、人種という知の今後の姿を見る」

「本来見えるはずのない人々の差異は、歴史・社会的にどのように徴づけられてきたのか。人種主義は社会階層、ジェンダー、民族の政治(ポリティクス)とどう複合してきたか。見えない人種が創られていく現場に、近代史と現代、日本とアジア・ヨーロッパ・アメリカの事例から切り込む」
      (それぞれ、3巻、1巻のパンフレット案内文) 

 3巻本の論集にそなわる特色のひとつに、「現代日本社会の諸問題と、世界の人種研究の現在をリンクさせる」点が挙げられています。

 その趣旨をまさに反映するかたちで、たとえば第1巻の第2部から第3部の冒頭にかけて、合州国の「ニグロ」人種判定裁判、天皇制、ロマを題材とする論考が息もつかせず連続しながら繋がっていくその配置に、とりわけ感銘をうけました。

  人種という人間の神話的分類にまつわる自社会/異社会の歴史的基盤を同時並行で掘り返していくうえで、今後欠かすことのできない大きな参照軸になる共同研究の成果だと思います。これはおすすめです。