2019年6月5日水曜日

友常勉『夢と爆弾』

思想史研究の友常勉さんが、このほど新著を発表されました。

友常勉『夢と爆弾-サバルタンの表現と闘争』
           航思社、2019年5月31日発行。

本書は、著者が2012年以降に発表した論考群に、書き下ろしの考察2篇を加えた論集です。

「二〇一二年に河出書房新社から『戦後部落解放運動史 永続革命の行方』を出版したとき、その終章で、私は以下のようなことを書いた。資本制社会を相対化するために、さまざまなマイノリティと底辺労働者との出会いをこちらからつくる必要があると。そのとき念頭にあったのが寄せ場の労働運動であり、アンダークラスの闘争であった。本書に収録したテキストのテーマはそれぞれ異なっているが、そのなかで私が追求してきたのは、上記のことに尽きる」                    (本書あとがきより)

いずれも凝縮された密度からなる論考群の集成に、おもわず息を呑むような感覚をおぼえます。各論に言及のある、船本州治、桐山襲、出口なおといった固有名については、かねて立ち止まって熟考してみなければと思ってきた主題であり、また、大道寺についてはとくに収監後の辺見庸との交流を、高橋和巳については上原康隆が生前アパートに所持していた数少ない書物のひとつに『孤立無援の思想』があったことを、以前からどう捉えるべきか思いあぐねてきたところがあります。それだけに、本書からは多くを学ぶことができるように予感します。昨年6月にコメンテーターとして参加させていただいた、井上康・崎山政毅『マルクスと商品語』合評会(本ブログ掲載)におけるマルクス価値批判論のさらなる再考の契機も、本書から得られればと考えています。