2021年10月7日木曜日

田宮虎彦「花」


 「田んぼや畑には食糧農作物以外はどうしても植えちゃあならねえというだ、植えれば懲役に行かねばならねえというだ、だけどもよ、田や畑でねえところなら、花を植えても食糧農作物をへらすことにはならねえはずだとかあちゃんは思うだよ」

「かあちゃん、かあちゃんは九郎畑に花を植えるってか、いくらかあちゃんでも九郎畑は無理だ、あすこは畑じゃねえだ、やせた谷だ、それによ、谷は谷でも朝日谷は風っ早(かぜっぱや)だ、何が何でも、花が出来るわけがねえだ」

「おめえに話があるといったのは、ほかでもねえだ、九郎畑に何も出来ねえってことは、かあちゃんもよく知ってるだ、かあちゃんはそれを知ってて、おめえにたのむだ、かあちゃんには花をつくることをやめることは、どうしても出来ねえだ[…]かあちゃんは君浦の畑という畑を花でうずめてしまいてえと思って来ただ、かあちゃんは花なしには生きていけねえだ、なるほど花は口で食べることは出来ねえだが、口で食べるものだけが食べものじゃねえだ[…]」         (田宮虎彦 1963「花」)

2021年9月12日日曜日

講演会&ワークショップ報告集『沖縄とポスト植民地主義文学』

 

今年1月に開催された講演会&ワークショップの報告集が、このほど冊子形式およびウェブ上で刊行されました。

東京外国語大学国際日本研究センター 編『沖縄とポスト植民地主義文学-崎山多美と〈シマコトバ〉というバクダン』2021年8月31日発行.

当日参加させていただいた部分の記録は、次のとおりです。

真島一郎「まつろわぬ声/さえぎれぬ谺-アフリカとポストコロニアル文学」pp.77-95.

報告集全体は、下記サイトの末尾からダウンロードできます。 

報告集PDF

 

 




2021年9月2日木曜日

GREEN JAIL:緑の牢獄

 

 ドキュメンタリー映画『緑の牢獄』

東京再上映決定!

10月1日(金)

  ~10月15日(金) 

於:CINEMA Chupki TABATA (UDcast対応)



2021年8月1日日曜日

暗黒に連なるうす暗い尻尾に…

 […]芸術という称号、それは暗黒にはとどかない[…]光はみずからの先端、みずからの前衛を恐怖する矛盾を犯し、そこに権力が露呈する[…]「光」の中で決定された「芸術」という称号のとどかないところ[…]にはただ露骨な好奇心だけがひたすら露呈され、そのとき踏みつけている暗黒の尻尾だけが、その唯一の引力となっている。その片足に全神経が集中し、振動している私たちの体にとって、あるいは私たちの予感を探知しようとしている光の先端にとっては、芸術という称号の助けは無意味であり、それを自由と名付けることも不必要とさえ思われる[…]うすれゆく光の先端全域の振動はやがて発覚し、明確な光がそこを照らし、その残された記録から推定して光がはじめてその振動を自由と名付けるだろう。しかしそこに明るく照らし出された尻尾は、すでに切断された尻尾の断片であり、そこで名付けられた「自由」とは、すでに固型し終えた領収書にすぎない[…]私たちの好奇心は、光という明確な意識、そこを統制する光源を離れたそのうす暗いゾーンではじめてあらわになるのだ。その暗黒に連なるうす暗い尻尾にそっていくとき、それはちょうどペスト菌によって占領された静かな街のように、そこではすべてが自由であり、すべてが危険である[…]自由であり危険であるもの、それが光にとっては無秩序であるとすれば、その街に無秩序をもたらすものは、あたかも私たち人類に対立するペスト菌の秩序のようでもあるが、それはむしろ平等というべきであり、ペスト菌の自由が、私たちをその街の自由の中に引きずりこむ。ペスト菌ではなく人類であり、光の先端でありながら光である私たちが、「光」にとって「ただ一つの暗黒」の中に「暗黒の無数」を探知しようとするとき必要なのは、いわばこの「ペスト菌の自由」である。私たちにかかわってくる相手の自由を発見することである。このようにして己れの内部の権力から墜落しながら発覚する自由、光源を遠く離れながらひたされていく自由、それが当然要求し、うす暗がりからふたたび強烈なわれわれの光をあびてあらわれるものに「オブジェ」がある。            (赤瀬川原平、1967「言葉の暗がりの中で」より)

2021年7月12日月曜日

『萌える人類学者』書評

 

春先にこのブログでお伝えした新刊エッセイ集『萌える人類学者』(馬場淳 他編、東京外国語大学出版会)の書評が、このほど『図書新聞』に掲載されました。

皆川勤「「萌え」と人類学者はどう結びつくのか」『図書新聞』2021年7月10日号.

本書に私の寄せた拙いテクストへ新たな感応の命を灯してくださった評者の皆川勤さんに、心より感謝申しあげます。