2026年4月11日土曜日

水俣からあなたへ

 

運動体「水俣・写真家の眼」プロジェクトの編集により、わたしたちの過去と未来にむけて計り知れない力をひめた歴史的な写真集が刊行されました。「対象:中学生から大人まで」という読み手の想定枠、そしてなにより24万点超の作品から厳選に厳選を重ねて〈あなた〉の瑞々しい感性に届けられる89点の作品には、「手渡す」という人間の本来的な営みに寄せた、ある格別の思いが込められているはずです。

一般社団法人 水俣・写真家の眼 

『水俣からあなたへ-9人の写真家が見つめた水俣病の70年』 リトルモア、2026年4月15日発行。

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[水俣・写真家の眼] 芥川・仁(あくたがわ じん)、石川武志(いしかわ たけし)、北岡秀郎(きたおか ひでお)、桑原史成(くわばら しせい)、小柴一良(こしば かずよし)、塩田武史(しおた たけし)、アイリーン・美緒子・スミス(あいりーん みおこ すみす)、田中史子(たなか ふみこ)、宮本成美(みやもと しげみ)

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汚(よご)された海は埋(う)め立てられ、広い公園になった。

海にいた魚や貝はどこへ行ったのだろう。

 

人間はこれからどう生きていくのだろう。

 

水俣(みなまた)からあなたへ。

 

 

 

 

 

 

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「水俣(みなまた)・写真家の眼」は、1960年から水俣を撮影(さつえい)してきた9人の写真家たちが集まり、発足した団体です。9人の写真家は、水俣と向き合ってきた時期も、撮影の目的や方法もそれぞれ異なります。[…]そんな9人の24万点を超(こ)える写真を人類の財産として未来に手渡(てわた)すため、「水俣・写真家の眼」は様々なプロジェクトに取り組んでいます。[…]これから生きるあなたには、写真をじっくり見て、考えてほしい。[…]写真1枚1枚が、時代や写真家の意図を超え、見る人の眼差しを通して、新たな発見を生むことを期待しています。 

 

(それぞれ本書キャプション、本書「おわりに」より)

2026年4月5日日曜日

a final note in this personal vein

 

マーシャル・サーリンズが死の4年前に発表した未邦訳論考の末尾。巨人の集中講義を本郷の小さな教室で受講したのは、1980年代なかばだった   2021年4月5日没(享年90歳)

For myself, I am a Hocartesian. A final note in this personal vein. Written by one of a certain age, this pretentious article has the air of a swan song. Similarly, for its concern with disappearing or disappeared cultural forms, it is something of the Owl of Minerva taking wing at dusk. Still, it does manage to kill those two birds with one stone. 

 

2026年2月28日土曜日

未来に宛てられた〈私たち〉の帰還

 

『越境広場』最新号に、小文を寄せました。

真島一郎 「未来に宛てられた〈私たち〉の帰還- 中村隆之『ブラックカルチャー』にふれて」『越境広場』第15号、102-105頁、2026年2月14日発行。

2026年2月20日金曜日

紀伊國屋書店 ブックフェア&イベント

 

 

論集『生を見つめる翻訳』の刊行を記念し、このほど紀伊國屋書店でブックフェアとトークイベントが開催される運びになりました。本書に目を留めてくださった書店関係者のみなさまに厚く御礼申しあげます。ブックフェアでは、居並ぶ翻訳書の壮観をぜひご堪能ください。

 

■『生を見つめる翻訳-世界の深部をひらいた150年』刊行記念ブックフェア

  日本の〈翻訳150年〉、この豊饒なる闘い

  会期 2026年3月4日(水)~4月5日(日)

  場所 紀伊國屋書店 新宿本店2階 BOOK SALON

    https://store.kinokuniya.co.jp/event/1770711152/

    海外の優れた著作を日本語に引き受ける営み――翻訳は、これまで私たちの公共圏に、はたして何をもたらしたのだろうか。当代第一線の翻訳家・研究者総勢37名が、翻訳をめぐる体験と考察を綴った本書の執筆者たちによる、魂のこもった翻訳書の数々から、日本の〈翻訳150年〉がこれまで形作ってきた豊饒なる闘いの歴史が、さまざまに、表情豊かに浮かび上がります。本フェアでは2025年12月に刊行された『生を見つめる翻訳 世界の深部をひらいた150年』【東京外国語大学出版会】に取り上げられた書籍や関連書から、編集された久野量一さん、千葉敏之さん、真島一郎さんが60点ほどをセレクトして展開いたします。

 

■『生を見つめる翻訳』刊行記念トークイベント

  久野量一×千葉敏之×真島一郎

  日時 2026年3月6日(金)18:40開場 / 19:00開演

  場所 紀伊國屋書店 新宿本店3階 アカデミック・ラウンジ

  参加方法  無料。着席での参加は事前予約

  https://store.kinokuniya.co.jp/event/1770707555/ 

  海外の優れた著作を日本語に引き受ける営み――翻訳は、この150年余りの間、私たちの公共圏に、はたして何をもたらしたのだろうか。本書には総勢37名の、当代第一線の翻訳家・研究者が坦懐に表明した、翻訳をめぐるさまざまな体験や考察が綴られています。ある翻訳が開始されるのに、どのような原著との出会いがあり、さらに原作者との交流があって、その翻訳を完成させるのに、どのような意図や動機が込められ、情熱が注がれたのか。日本の「翻訳一五〇年」の歴史の一端が、ここに立ち上がる――。
  編者の久野量一さん、千葉敏之さん、真島一郎さんに、翻訳をめぐるさまざまなストーリーを、縦横無尽に語っていただきます。

2026年2月16日月曜日

立春末候

 






















 

 

 

かたすみへ掃きよせたわずかな土くれに雑草が芽吹く。なにか声がきこえて、育ててみる。はじめはブタナ salade de porc にみえたが、斯界の教科書『散歩で見かける野の花・野草』(金田一 著)に照らし、これはノボロギクだったかと想像を変えた。わくらば、枯れ葉がいつまでも茎からおちない。讃岐金刀比羅宮百花図、若冲の細部が幻によぎる。木枯しの昼にも綿毛がいっこう飛ばず、だが気がつけばすべてが飛び去っている。外来種であるばかりに心ない名を与えられるこの驚くべき日々の生を、affect と形容するだけの思考は、おそらく現実を言いあてていない。故・甲斐信枝が、澄んだ眼で記録してきた生のすがたをただ見つめなおすこと。

2026年2月7日土曜日

『魔性の文化誌』文庫化

 

吉田禎吾先生の著書『魔性の文化誌』が、このほど講談社学術文庫として装いも新たに刊行されます。巻末に本書解説を寄せさせていただきました。

真島一郎「聖の迷宮」、吉田禎吾『魔性の文化誌』(講談社学術文庫、2026年2月10日発行)、304-313頁。

2026年1月30日金曜日

卒論発表会2025

 


ゼミ卒業予定者による今年度の卒論発表会を昨日1月29日に開催しました。

『卒業論文集2025』所収の論文は下記9篇です。大学生活4年間の学修の集大成にふさわしい労作・力作が揃いました。みなさんどうぞ胸を張ってご卒業ください。

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「実習生」から「労働者」への移行で変わるもの - 育成就労制度移行期の日本語教育 -

静岡県島田市における交通空白への地域的対応

守護者としての責任 - 先住民マオリとパケハの軌跡 -

沈黙をほどく - 反同性愛法下を生きるナイジェリア女性の語り -

まちと共に歩む - 地域活動を通じたシビックプライドの形成 -

公の外から - ケアする民主主義からみる社会生態学 -

病いとケアの相互性 - 病者と医療専門家の苦悩に着目して -

曖昧な性を受け止める -  非二元的ジェンダー・カテゴリーへの自己同一化の限界と「自分らしさ」の可能性 -

ストリートを取り返せ!- 新宿西口・パレスチナにおける相殺活動をめぐって -

孤独から生まれたアンセム - ケンドリック・ラマーのメッセージ -

2026年1月28日水曜日

ゼミ論発表会2025


 ゼミ3年生による今年度のゼミ論発表会を昨日1月27日に開催しました。

『ゼミ論文集2025』所収の論文は次の9篇です。みなさんの1年間の努力が見事に結晶しました。

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止まれない主体の病理 - 肯定性の過剰と〈立ち止まる力〉の回復

食卓へのまなざし - 食と健康をめぐる国際支援の再考

内なる他者と外なる他者 - マレー人ムスリムの事例から

切り離せないわたしたち - 永山則夫連続射殺事件から

都市を縫いなおすまなざし - ベイオール観光開発をめぐる文化編纂のポリティクス

Tadeusz Borowski 「皆さま、ガス室へどうぞ」- 被害と加害が混在する世界で

共同体を不可能にする「共同体」- ジャン=リュック・ナンシー 『無為の共同体』を読む

壁の向こうにいるあなたへ - ロヒンギャ問題から考える他者への応答可能性

あなたとわたしのいつかの自死について - シオランと他者

2026年1月23日金曜日

月刊たくさんのふしぎ 世界でくらすクルドの人たち


敬愛する友、金井真紀の最新作出現!

やはり今回もイラストにあふれる、ふつうの人びとのやさしくやわらかな顔、顔、顔。幼い読み手の眼と心に、旅の思いがきっとふかく染み渡っていくはず。

金井真紀『春をよろこぶ みんなで踊る 世界でくらすクルドの人たち』(月刊「たくさんのふしぎ」通巻492号)、福音館書店、2026年3月1日発行。

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そのうちお姉ちゃんのシェキラ(15歳)が帰ってきて、みんなでドレスの話でもりあがる。シェキラがはにかみながら言った。「ネロウズのとき、男の服を着る女の子もいるの。わたしもいつか男の格好をしてみたいな」それを受けて、イブラヒミさんが教えてくれた。「近所の村には、男だけど女のドレスを着るラハさんという人もいる。彼のインスタは人気があるよ」女は女の服を着なさい、男は男の服しかダメ、と決まっていたらきゅうくつだ。ときどきその境を飛びこえる人がいて、まわりもそれを受け止めていて、なんだかホッとする。[…]翌朝、イランを出発した。シェキラ、チロー、ヒローと「またね」のハグをしたあと、イブラヒミさんに国境まで送ってもらった。[…]わたしはリュックをかついで、歩いてイラクに入国した。国境を越えて、山道を下ること1時間半、スライマーニーヤに到着した[…]日本に住むクルド人に紹介されたおじさん[…]物知りで顔が広いジャフさんは、連日、じょうだんを連発しながら街を案内してくれた。

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「クルド人は輪になって踊るだろう? 輪は1年を表す。1年、また1年と人生は続いていくんだ」(ホセインさん)

(本書本文・さし絵より)

2026年1月7日水曜日

塩田武史 写真展

 

熊本大学構内で来月、塩田武史写真展が開催されます。会期5日目に予定されているトークイベントに、わたしもすこしだけお邪魔することになりました。作品の被写体となられたかけがえのない人びとの姿とともに、塩田武史さんの偉業を偲ぶ、たいせつな集いになるものと受けとめています。

水俣病公式確認70年を迎える本年5月1日をひかえ、作品との黙せる対話からふたたび新たな教えを学びとることができればと考えています。 

 

 視野狭窄がひどい牛島のじいちゃんは、一九四四年に熊本の郊外から茂道に住み着いた。タコ、ボラ、ナマコなどを「食いも食いよった」。

 そのじいちゃんが支援者との交流会で、「私にも喋らせてハイよ」と、こんな話をした。

 「わしはここに来とる者(もん)は全部、バカばっかりじゃと思う。わしがこう言うたからて腹(はら)かかんごつしてハイよ。なぜかならば、ほんにあん遠か所からわざわざ裁判ば見に来たり、名前も知らんで手紙もやらす。カンパばやらす。水俣ん如(ご)たっ所まで来て、手伝いはさす。これをバカち言うか利口ち言うか、考えてみればすぐわかる。ばってんな、わしはバカが好く。世の中はバカと利口がおるが、わしゃほんにバカが好く」。

(塩田武史『僕が写した愛しい水俣』岩波書店、2008年より)

2026年1月5日月曜日

70周年を経て

 

 

海外事情研究所ウェブページの改訂に伴い、しばらく前任の方の記載に留まっていた挨拶文を寄せました。微力ながら気持をあらたに、務めを続けていこうと思います。

真島一郎「所長挨拶」https://www.tufs.ac.jp/common/fs/ifa/greetings.html