浜本汀(はまもと なぎさ)さんは、生まれ故郷の天草で小説を創作されながら、からゆきさんの隠された歴史を足で調べ、考えている、若き文筆家です。 熊本大学の文化人類学者、香室結美さんからのおたよりで浜本さんのことを私が知ったのは、つい2か月ほど前のこと。ネット通販が始まるのを待って、浜本さんのZINE 『石ひとつ置くこと』をさっそく購めました。一読、端正で繊細な筆致に、冒頭から魅了されていきます。〈石〉と〈水〉という忘れがたい対位法の思考が、ある切実な記憶の問いを訴え、掘り下げながら、同書所収のエッセイ四篇と小説一篇を閑かなリズムで貫いている。書き手のそうした声の連なりを聴き終えたとき、じつに重い問いが読み手へ渡されたことが、体でじかに感じられました。三觜咲さんの表紙イラストも喩として絶妙。
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目の前の、水に流されそうになっているたったひとりの声を聞いて、
できるだけまっさらにうけとめようと努めて、
心のなかに、ちいさな石ひとつ、置く。
覚えておくために。
大きな水の流れに抗うために。
(同書所収、第四エッセイ「石ひとつ置くこと」より)
