2019年5月8日水曜日

浜田明範 編『再分配のエスノグラフィ』

浜田明範さんをはじめとする俊英の文化人類学者が、このほど再分配を再考する論集を発表されました。

浜田明範 編『再分配のエスノグラフィ
       -経済・統治・社会的なもの』
         悠書館、2019年4月22日発行。 

「[…]経済人類学において長らく忘れられていた主題である再分配を再考するにあたって、私たちは、人類学で行われてきた議論を踏襲しながらも、対象としての再分配を拡張して捉えようと試みた。古典的に議論されてきたより小規模に行われている再分配的な実践だけではなく、所得再分配政策における富の再分配とその影響についても射程に収めようと考えたのである。この目的を達成するために、私たちは、まずは、「再分配とは集めて配ることである」というミニマルな定義を採用することにした[…]」

「[…]多様な現象を視野に入れながら、改めて再分配と集団の関係について人類学的に議論することは、「社会的なもの」に関する研究にも貢献することになりうる。[…]本書は再分配を人類学の主題として再生させるとともに、人類学の知見をもって「社会的なもの」についての議論に貢献することを目的としている」(いずれも浜田「序論」より)

本書のもとになった共同研究の中間成果が、2015年の日本文化人類学会研究大会で分科会発表として企画されたとき、私はコメンテーターとして声がけをいただきました。しかし、明日が分科会という日の夕刻、大阪の大会会場にいた私に伯父の訃報が届き、東京へ戻ることに。しかも、飛び乗った上りの新幹線が、地震の影響で途中停車&停電。午前1時にようやく帰宅し、だいたいこんな内容のコメントを、と考えていたメモをもとに、夜明けまでかけて会場代読用の完全稿を仕上げた思い出があります。鋭い問題意識をもつ共同研究にこのようなかたちであれ接することができたのを、本書の刊行にあたり、あらためて光栄に感じています。