2025年11月27日木曜日

崎山多美 『フウコ、森に立て籠る』


作家の崎山多美さんがこのほど新たな長編小説を発表されました。

崎山多美 『フウコ、森に立て籠る』インパクト出版会、2025年11月25日発行。

「過去の言葉を蘇らせる。あるいはそれに別の、新たな生命を与える。決して届かぬ何かに言葉を届かせようとする絶えざる営みを繰り返す[…]崎山は、いつだって未生の言葉を産み出そうとする。言葉の森に立て籠り、未だ生まれえぬ言葉を産もうとする[…]小説『フウコ、森に立て籠る』は、崎山多美文学に親しむ者ならお馴染みの、唐突なる来訪と呼びかけによって幕を開ける。突然の来訪とそれに続く呼びかけ、それを受けた「わたし」は、それが果たして自分に対する呼びかけなのかどうかも分からぬままに応答し始める。崎山作品は、不意の呼びかけとそれに応答する「わたし」をたびたび描いてきた。「わたし」は、呼ばれたのか、呼んだのか、受動なのか能動なのか。判別不能な宙吊り状態の主体ならざる主体の「わたし」は、他者の訪れを迎え、他者に迎えられ、不透明なままでともにあろうとする。崎山は、自律と他律の間を揺れ動く蠢く生の有り様を綴り続けてきたとも言えるかもしれない」

               (渡邊英理さんの巻末解説「崎山多美、言葉の森に立て籠る」より

2025年11月13日木曜日

「深い河」を遡行する


 アーティストの吉國元さんから、個展「深い河 DEEP RIVER」開催のおたよりをいただきました。来週22日(土)には下記オープニング・トークイベントが予定されているとのこと。ぜひお話を聴きにうかがおうと思います。楽しみです

2025年11月22日(土)16:30~18:00 会場 LAG(LIVE ART GALLERY)

事前受付制・定員40名

https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/31665

榎本空×吉國元 「深い河」を遡行するー榎本空さんを迎えて

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深い河、神よ、 わたしは河を渡って、集いの地に行きたい -黒人霊歌

「落下して散らばったいくつもの硬貨のような人々の移動の軌跡を思う。なにが僕たちの生を規定するのだろうか。国家・貨幣・パスポートの支配から僕たちは逃れられないのか。従うしかないのか。しかし、それでも僕たちは、それぞれの持ち場で自分らしく生きるための工夫を怠らない。遠くを想い、大切な人がその人らしく生きていてくれることを願う。」

2025年に描いた絵を集めた本展のタイトルを「深い河」にしたのは、歴史の底流にある意識や感情に触れることによって、他者たちとつながることを願ったからである。

「深い河」は、太古の河のように流れる静かな時間のことであり、遠くの場所や人との合流を期待することでもある。私は河を渡りたい。

吉國元 (個展開催案内文より抜粋)