2015年4月10日金曜日

ココア共和国の近代

社会科学の視点に立った
本格的なコートディヴォワール研究書が
このほど刊行されました。待望の一書です。

佐藤章
『ココア共和国の近代
  -コートジボワールの結社史と統合的革命』
          アジア経済研究所、2015年3月23日。

著者の佐藤章さんは、(私の恩師でもある)原口武彦先生との出会いをきっかけに、これまでずっとコートディヴォワール共和国の過去と現在に向きあってこられた、国内最良のコートディヴォワール研究者&ウォッチャーです。
「原口門下の兄弟弟子」という言葉では、ちょっと古すぎるでしょうか…

佐藤さんが発表してこられた数々の単著論文を、私はこれまでにも必要が生ずるたびに、何度もくりかえし精読してきました。精読に値するテクストは、それ自体が精度の高い内容と展望をもつからです。
 
SAA(アフリカ人農業組合)の結成過程といい、
PDCI (コートディヴォワール民主党)の組織化と統治実践といい、そこには西アフリカの一国史を超え出た20世紀国家論(あくまで唯名論的な意味での国家論ないし「国家化」論)の彫琢にむけた可能性が込められています。さらに、そうした過去との対峙を、内戦に逢着してしまったこの国のまさに「現在」と繋げて論じきっているところが、ポスト構造調整期のアフリカないし「世界」をひとつの連動的な場として捉えようとする多くの読者に開かれた、本書の最大の山場になっているように思います。