ヴィーコ生誕350周年にあたる今年、『新しい学』1744年版の訳者・上村忠男さんが、ヴィーコ研究の厚みをいっそう増すかたちで、このほど1725年版を完訳されました。
ヴィーコ 『新しい学の諸原理 [一七二五年版]』
上村忠男訳、京都大学学術出版会、
2018年12月20日発行。
「クローチェが再評価し、さまざまな思想家に影響をあたえた『新しい学の諸原理』は、汲めども尽きぬ発想の源泉であり、詩的記号論など示唆的な多くの議論を含んでいる」 (本書 帯より)
「[…]『新しい学の諸原理』一七二五年版と一七三〇年版および一七四四年版とのあいだには、全体の構成にかんしても大きな相違が認められる。[…]ヴィーコは、『新しい学の諸原理』一七二五年版では、その直前に計画して執筆したもののお蔵入りになってしまった『新しい学・否定的形態版』の痕跡をなおも多分にとどめていることを認めたうえで、そのような否定的な、つまりは論敵にたいする駁論的な論の進め方を否定的にとらえている。しかし、一七二五年版がそうした痕跡をとどめていることは『新しい学の諸原理』がどのような学者たちのどのような学説を論敵にして書かれたのかをうかがうのにはむしろありがたいことではないだろうか。一七三〇年版以降では極力払拭の努力がなされているだけになおさらである。[…]一七二五年に世に問われた『新しい学の諸原理』は、これをヴィーコが規定しているように第二・第三版によって代替可能な「最初の新しい学」と位置づけるよりも、それ自体独自の光彩を放つ一個の独立した著作とみるほうが妥当ではないかと思う。」 (巻末 「解説」より)