次週月曜8月4日、
公開合評会に参加します。
対象書は、若き思想家・桑田学さんの
初の単著です。
桑田学
『経済的思考の転回-世紀転換期の
科学と政治をめぐる知の系譜』
以文社、2014年
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書の冒頭から私は、いささかの興奮を禁じえませんでした。
古典力学から熱力学への視点の移行が、
社会エネルギー論をつうじて、同時代の経済的統治に
およぼしてきた影響の再考という、
みごとなまでにアクチュアルな桑田さんの理論的着眼に、
自分が昨年、短い文章にまとめた
セネガルのエネルギー問題のことも想起しました。
「ニュートン力学が世界を一元化するために捨象した摩擦や
空気抵抗、熱伝導や物質の混合というエネルギーと物質の
拡散・散逸が物理的自然の原理であることが改めて認められた[…]こうした自然界に対する科学的認識の変容によって、
自然における生命の位置が新たに問い直されるとともに、
経済社会もまた、自然界の不可逆的な変化から自立的に
運動する「永久機関 perpetual motion」、すなわち商品の生産と
消費の無限反復的な連鎖(閉鎖系)と見做すことが不可能となっていった[…]」 (同書18ページ)
「もともと熱の生む動力の原理的限界の問題をめぐってカルノーによって着手された熱力学の研究は、
クラウジウスによるエントロピー論の形成で一応の完成を見た。それは「可逆過程は現実の自然界にただのひとつも存在していない」という事実を突きつけるものであり、クラウジウスはそこに資本主義的な工業化の拡張の
本質的な制約があると指摘した」 (同書25ページ)
上の記述は、古典力学から熱力学への転回を、限界革命前後の経済学と照らしあわせる作業が試みられている本書の出だしにすぎません。
デュルケムの『社会分業論』を特異なかたちで継承したイギリス社会人類学の成立が、
経済学の限界革命と多少とも繋がれていた史的経緯を想うにつけ、
人類学的思考における「力」とは何であったのかをめぐる、私的な妄想は広がるばかりです。
合評会は公開です。ご関心のある方は、当日どうぞ御来場ください。