2015年10月2日金曜日

山口昌男 聞き手: 川村伸秀 『回想の人類学』



編集者・文筆家の川村伸秀さんが、今年初めの『エノケンと菊谷栄』につづいて、また新たに山口昌男の貴重な記録を現在に甦らせてくださいました。

山口昌男 (聞き手 川村伸秀) 『回想の人類学』 晶文社、2015.9.30。

版元を変えながら第5号まで続いた後、惜しくも休刊してしまった2000年代前半の雑誌『山口昌男山脈』連載のインタヴュー記録「回想の人類学」全5回にくわえ、今回の新著では、雑誌休刊後も川村さんが山口昌男と継続していた、たいへん貴重なインタヴュー記録が載っています。問題の1968年から70年代全体にかけての仕事を語る、山口昌男の回想。さらに、当時の私信や図版、単行本未収録のテクストなども並載されていて、山口との未知の対話の可能性が、読み手には随所に開かれているように感じられます。以前、「回想の人類学」第5回(本書第5章)を読んでいて、あのピーター・エケが、山口昌男のナイジェリア時代の教え子だったことを知り、読み手のひとりが軽い衝撃をおぼえたように。


川村さんは、前著『坪井小五郎』との関連で、湘南を記録する会の主催により先月開催された『坪井小五郎と箕作(みつくり)家の人々』展の図録も編集されています。じつに美しい図版の数々に、私はしばし魅了されました。
明治44年の時点で坪井が児童向けに執筆した絵本『ウミトヒト』のなかで、「フィジー」や「マーキサス」、「ニューギニー」「ニュージーランド」とならんで、「アンダマン」が杉浦非水の挿絵とともにカタカナ書きで紹介されていたこと………ラドクリフ=ブラウンによる長期調査のわずか3年後………