2017年7月25日火曜日

和田忠彦 『遠まわりして聴く』
























和田忠彦さんが、「翻訳と詩と映像と絵画などをめぐって、ことばと声と音について」の新著を刊行されました。

和田忠彦 『遠まわりして聴く』 書肆山田、2017年7月25日発行。

「本書に収めた川端康成のイタリア語版選集にはじまって渡邊裕の音楽時評集で閉じる十八篇は、『声、意味ではなく』(平凡社、二〇〇四年)につづいて、月刊誌『國文學』(學燈社)に連載した文章を集めたものだ[…]その間、『声、意味ではなく』という前著の表題に籠めた意図に理解と共鳴をしめす読者も少しずつ現れてきて、意味生成の場としての翻訳が抱えこむズレはもちろん、翻訳という行為が展開する現場において意味自体は排除され、「声」そのものが物語の反覆や物語性への依存を許容しない演奏の結果なのだという認識にふれる機会も、さして稀ではなくなってきた」                                       (本書「あとがき」より)

川端康成、モラヴィア、宮川淳といった、過去の或る時期に自分がその大半の作品(モラヴィアについては全邦訳作品、ですが…)を読んできたような書き手が批評の対象となっていることの魅力にくわえ、なにより本書の端正な文体には思わずため息を漏らしました。

装画:松浦寿夫。