2018年3月5日月曜日

『総合人類学としてのヒト学』

環境人類学・災害人類学を専攻される高倉浩樹さんが、放送大学の印刷教材として、新たな視座に立った人類学の導入テクストを編集・刊行されました。

高倉浩樹 編 『総合人類学としてのヒト学』
      放送大学教育振興会、2018年3月20日発行。

「本書の狙いは、文化人類学や生物(形質)人類学双方の視点を踏まえながら、ヒトの理解を総合的に行うことである。厳密に言えば、生物人類学そのものというよりも、その隣接分野である人類生態学や生態人類学、霊長類学などの知見を導入することで、文化(社会)人類学を総合化することを目指した。
 具体的には、地球のエネルギー収支や環境生態系における人間社会の位置づけに触れた上で、どのような過程をへて現在にいたるのか、食料摂取を含む幅広い意味での資源利用技術、分配とその社会効果、有用なものを価値づけるという意味での象徴体系とそれを支える信仰的信念、近代国家のような高度化された政治体制を含む社会組織の多様な特徴などが内容である。いずれのテーマでも多様性を支える普遍的なしくみが生物学的基盤と何らかの関わりがあることに触れることを心がけた。」 (本書「まえがき」より)

たとえば、この一文の末尾に記された「生物学的基盤」を、ヒトという、有限な生そのものの基盤として読み換え捉え返すならば、ここで提起されている発想のしかたが、「統治」も「破局」も含めた今日の世界性全般を端的に反映していると考えることもできるでしょう。