2018年5月12日土曜日

阿部年晴 『アフリカ神話との対話』

一昨年の秋にお亡くなりになった
恩師 阿部年晴先生の御遺稿が、刊行されました。

阿部年晴 『アフリカ神話との対話』 三恵社、
                      2018年3月16日発行。


「草の根の神話意識は生活世界に棲息しそこに深く根ざしているが、身のまわりの世界の在り方を自明のこととみなさず、人間社会を支える規範や制度(というフィクション)の究極の根拠を求める。それを社会や文化自体のなかに見いだすことができないので始原へと遡行し、そこで虚無の深淵に直面する。ところが興味ぶかいことに、この深淵は神話意識にとっては、単なる虚無ではなく万物の始原としての無や混沌だ。世界を飲みこもうとする脅威であると同時に、精神と文化が「他なるもの」(絶対他者)に遭遇する場でもある。
                […]
精神や制度の究極の「根拠」はそれ自体のうちにはなく、「他なるもの」(他者)との関係にある […] これが、神話が開示する真実だ」       (本書「なぜいま神話か」より)