2017年5月30日火曜日

人類・学・の外へ

渡辺公三先生の御退職を記念する論文集がこのほど刊行されました。わたしは、下記拙文を寄稿させていただきました。

渡辺公三・石田智恵・冨田敬大(編)
『異貌の同時代- 人類・学・の外へ』
以文社、2017年5月15日発行。

真島一郎 「力の翻訳- 人類学と初期社会主義」
   上掲書、pp. 353-391.

渡辺先生に初めてお会いしたのは、たしか1983年に、先生が駒場の演習授業を非常勤で担当されたときのことです。わたしは学部3年生で、演習のテクストは
Nuer Religion でした。とても静かな口調でとても尖ったことをお話しされる先生からたえまなく湧き出る緊迫感に、受講者一同、終始ビビりまくっていた記憶があります。

静かな口調が、なぜ論理としては張り詰めていくのか。
渡辺公三の聴き手や読み手は、おそらくすでにそのころから、或るひとつの問いと課題に向きあうよう、不断に促されていたからです。今回の論集の帯に記された一言は、その点でまぎれもなく事の本質を証しているのではないでしょうか。

「思考しえないもの」を思考するために